牡丹
鮮やかな大輪の花を咲かせる牡丹は、別名を「富貴花」「富貴草」などともいい、家紋や振袖にも多く使われ、吉祥文様とされています。
当代当主・加藤芳平が、松泉窯として最初に手掛けたという「牡丹」柄にはこんなエピソードが。幼い頃、「加藤家」の庭には大きな牡丹が何本もあり、春になると大輪の花が咲き乱れていました。小学校の入学祝いにと、祖父が勉強机を買ってくれた際、家具屋さんに届け先を伝えると、「あぁ、あの牡丹の花のお宅ですね」といわれるほどでした。以来、牡丹の花の季節には、祖父に買ってもらった勉強机から、庭に美しく咲き乱れる牡丹の花を見ていました。
「牡丹」は、単に「おめでたい」というだけではなく、当代当主の「思い出」の花でもあります。独自に開発した「鉄筆」で彫りだす「牡丹」は、そんな「幼少期」の祖父への思い、家族への思いを馳せる、いわば幸せな思い出の象徴ともいえるのです。